古い教会の聖堂、その広く突き抜けた天井に、透き通るような少女の声が響いていた。
その少女の容姿は抑えられた腕を振り解こうと足掻いてなお輝く、 美しい金髪と艶やかな肢体を備えている。


中でも目を引く長い耳は、彼女が人ならざるものである事をありありと示していた。
それは中つ国でもっとも美しいものたちと形容されていた森の賢者たち、エルフの特徴である。

ちゃりと、きつく握り締めた手のひらの中で硬貨がぶつかり合う。 目じりに滲んでいた美しい雫を
毀れ落としそうにしながら、 エルミアはすがるようにこの教会の主、神父へと瞳を向けた。
父と同じ、神の教えの元に生きる方ならば、 きっと慈悲深い判断をしてくださるはずだ──そんな淡い希望を込めて。